2010年5月、日本糖尿病学会による糖尿病の診断基準が11年ぶりに改訂され、7月から運用が開始されました。今回の改訂における最も大きな変化は、従来は補助的にしか用いられていなかったHbA1cが、血糖値とともに診断の第一段階に取り入れられ、それによって1回の検査で診断ができるようになったことです。
改訂前までは診断の指標として血糖値だけが見られていました。しかし、検査結果が基準値を上回っていても、1回の測定だけでは一過性の高血糖の疑いが残ります。糖尿病の定義は「慢性の高血糖状態」なので、再検査を行い、そのときも該当して初めて「糖尿病」と診断されていました。
HbA1cは、過去1、2ヶ月の平均血糖値を反映する指標です。6.1%という基準値は血糖の基準値と対応しており、それ以上なら慢性の高血糖となります。そこで、1回の検査で血糖値とHbA1cの両方を調べ、血糖値に咥えてHbA1cも基準を超えていたら、糖尿病と診断するようにしたのです。
目的は糖尿病の早期発見と早期介入です。厚生労働省の2007年の「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる人」は890万人にも上っていますが、その4割はほとんど治療を受けたことがありませんでした。1回の検査で診断できなかったことで、まだ糖尿病ではないと誤解したり、2回目の検査で糖尿病と言われるのが怖いなどの理由で検査を受けない人が多いのです。その結果、合併症が進行してから受診する人が後を絶ちません。
今回の改訂で、そういう人を減らせるとともに、より早期の糖尿病や食後高血糖、いわゆる「隠れ糖尿病」も発見しやすくなります。HbA1cが基準値を少し上回る程度の人も約6、7割は食後高血糖ですが、空腹時血糖値は正常に近い場合が多く、見逃されがちでした。今後は、75g経口ブドウ糖負荷試験を実施して確かめます。